「くだらないことに巻き込まれているな。嫌なら大きな仕事を担当すればいいじゃないか」
ラップを開ける寸前で手を止めた。横を見ると、社長が真剣な顔をしていた。
「やりたい仕事は待っていてもなかなか来ない。お前は全てが受け身だから、意に染まないアニメルームを我慢してやる羽目になる」
かっと頬が熱くなった。社長は見抜いている。私が本当は、この仕事を“やりたくない”と思っていることを。
「しかし、例のホテルの壁を見つめるお前の顔は、なかなか良かった」
「え……」
例のホテルって、課題の絵をかけるあのホテルだよね。
完全におにぎりを食べる手を止めてしまった私は、真顔の彼を見つめる。
「誰だって好きな仕事なら頑張れる。でもそれは、誰かが与えてくれるものじゃない。自分でつかみにいくものだ」
「はい」
「うちの会社は絵画専門じゃないから、わくわくする仕事を見つけるのはたやすくないだろうが、興味を持てそうなものを探してみろ」
「はい……」
他の誰かが言ったなら、反発したかもしれない。だけど、とても不思議なことに、社長の助言は素直に耳に響いた。



