もっと適した比喩を探しながら、エレベーターに乗って屋上に辿り着いた。うちの会社の屋上は緑化されていて、狭い公園のような趣になっている。昼休憩はいつも込み合っているらしいのであまり寄り付かない。この時間なら空いているだろう。
完全に癒しを求めて、屋上のドアを開けた。思った通り、人は私以外にいない。嬉しくなって、屋上の真ん中で緑の香りのする空気を胸いっぱいに吸い込み、代わりに溜まっていたモヤモヤを吐き出した。
ちょっと胸がすっとしたかな。気を取り直し、日陰のベンチを探そうと歩き出した、そのとき。
「えらく豪快なため息だな」
背後から聞き覚えのある低い声がして、ハッと振り返る。すぐそこにある茂みの裏から、背の高い西明寺社長の肩から上が胸像みたいにこちらをのぞいていた。
「げっ、社長」
「とんだ挨拶だな。『あのときは御馳走さまでした』くらい言えないのか。土曜日もそうだったが」
立ち上がった社長が、ゆったりとこちらに歩いてくる。どうしてこんなタイミングで彼に会ってしまうのか。



