根性で昼休憩を返上し、押し付けられた雑用を片付けると、時計は午後二時を指していた。
「横川さん、休憩とってないでしょ。行っておいで」
珍しく部長が私の様子に気づいてくれた。彼は労働基準局に目をつけられないよう、全員にしっかり休憩を取らせ、なるべく定時に上がらせるのが仕事だ。それだけが彼の仕事のすべてではないけど、重要な位置を占めている。上層部にも厳しく言われているようだ。
「ありがとうございます」
ここからは自分の仕事に専念できるはずだ。周りも、そこまで雑用溜まらないし、わざわざ私に押し付けるための仕事を探すほど暇ではないだろう。
お弁当と小さな水筒を入れた小ぶりなトートバッグに財布と携帯を入れ、息苦しいオフィスを出た。
「あー疲れた……」
腹が立っても、これ以上職場を炎上させないよう、淡々と、文句を言われないように仕事をしていくしかない。人の噂は七十五日、すぐにくだらない嫌がらせもおさまるだろう。
それにしても、男の性格悪いやつって、本当に悪いのね。『女の腐ったやつ』なんて言葉を聞くけど、あれは女性に失礼よ。松倉先輩は、例えるならカビの生えたチーズだわ。……それ、ただのリゾットにしたらおいしいやつか。



