まばたきを繰り返して見返した社長の口角が不気味に上がる。
「もう少し俺に付き合え」
「い、嫌です!」
どうして私が、社長と行動を共にしなければならないの。
拒否するのに、笑った彼は私を離そうとしない。明らかに不穏な雰囲気なのに、支配人は完璧な笑顔で私たちを上階へとつづくエレベーターに案内したのだった。
「放してよ。警察呼ぶわよ」
エレベーターに乗り込んだのは、社長と私の二人きりだった。その狭苦しい空間が怖くなり、勇気を出して睨む。
敬語は忘れていた。社長と言えど、相手は悪魔の使いだ。敬語を使う必要なんてない。この件が片付いたら、会社なんて辞めてやるんだから。
「どうしてそこまで拒否する」
「だって、社長は私とおばあちゃんの敵だもの」
「敵」
「私をどうするつもりよ。お金なら少ししか持ってない。人身売買でもするつもり? どこのお金持ちに私を売ろ
うっていうのよ。それかセクハラ目当て?」
「人身売買」
西明寺社長はいちいち私の言葉を反復し、やがて何かが破裂したように、ぷっと吹き出した。
くっくっと押し殺した笑いが、私の尖った神経を逆なでする。



