終わった。儚かったな、私の人生。きっと外国に売られて、臓器を取り出されて、どこかの山か海に捨てられるんだ……。

妄想がひとり歩きする私に、社長は意外な提案をしてきた。

「一か月以内に、今度オープンする別の新ホテルのロビーに飾る絵を探してこい」

「絵を?」

「模写でもリトグラフでも、油彩でも水彩でも構わない。宗教画でも、近代美術でも。俺が認める絵を探してこられたら、借金の返済を待ってやろう」

私は彼の秀麗な顔を見て固まる。

なんだそれ。何でもいいと言いながら、何もよくないじゃない。

「そんなこと言って、私が何を持ってきてもダメだって言うつもりなんでしょう?」

会社と関係ない第三者が評価するならともかく、社長ジャッジじゃ、話にならない。

「見くびるな。お前が本当に相応しい絵を持ってきたら、素直に評価してやる」

「嘘くさいんですけど……」

じとっと見つめるけど、彼は気にしない。

「どうする? 挑戦するもしないも、お前の自由だ」

ちらっとおばあちゃんを見る。母親代わりに私の面倒をずっと見てくれた彼女の手は枯れ木みたいにしわしわで、胸が痛くなる。