マジか。プリムーンルームをこきおろしているのを聞かれていたとは。いったいどこからどこまで聞かれていたのか。

背中を冷たい汗がだらだらと流れる。

「画家の孫なら、あのファミリールームを許せないと思うだろう。正しい神経だ」

「は……」

「しかしお前はわかっていない。あれは、“子供や孫に喜んでほしい”という親や親戚の自己満足を叶えるための部屋だ。あの部屋で子供が喜べば、自己肯定感が増す。ホテルの満足感に繋がる。あんな気色悪い部屋でも、需要があるんだよ」

最低な言い分だ。でも、自分も同じことを思っていた。こんなの、親の自己満足のためにある部屋じゃないかと。だから言い返せない。

これで会社もクビか……完全に退路を断たれた。

私とおばあちゃんで多額の借金を返すあてはない。社長の言いなりになるしかないのか。

唇を噛む私の横で、ほくそ笑む社長。彼が何か思いついたように指を鳴らした。

「できることならなんでもすると言ったよな」

「は、はい……」

自分の発言をこれほど後悔したことはない。この冷血社長なら、人身売買でも平気でやってのけそう。