「他に……選択肢はないんでしょうか」

「ほう?」

こちらを見上げる社長の目が、きらりと光る。まるで私を品定めするかのように見つめる彼は、完全に悪役だ。

「私にできることなら、なんでもします。お願いします。ここを残してください。お金は父を見つけて、いつかきっとお支払いしますから」

プライドを捨て、深く頭を下げる。

この土地も、おじいちゃんの絵も、お金には代えられない。

けれど私の頭に降ってきたのは、冷ややかな笑いだった。

「どうやって返すと言うんだ?」

「え……」

急に横柄になった口調に驚き、思わず顔を上げた。社長は口の片端だけを上げ、私を憐れむように見ていた。

「お前がうちの社員だってことは調べがついている。ぺーぺーの社員が何年働いても、この借金は返せないだろう」

さーっと血の気が引いていく音が耳の奥で聞こえた。

社長はおばあちゃんの周辺を丹念に調べたに違いない。だからお父さんの借金を見つけた。孫がどこで働いているかも、ばれているのが当たり前だ。

「昨日は真面目に働いていると思ったが、朝から威勢のいい声で愚痴を言っているのを聞いてがっかりしたよ」

彼は肩をすくめ、大げさに残念がっているように見せる。