「おばあちゃんの扶養に入っているから、保険証はあるよ」

 なっさけなぁあああ! 結局無職と一緒じゃん!

「ほんっとうにおバカな父が、ご迷惑おかけしました。すぐに日本に連れて帰りますので、手続きをお願いします」

 ぺこりとお辞儀すると、通訳されたドクターがにっこりと笑った。彼が部屋を出た途端、お父さんはだらんとベッドに寝転がる。

「やだなあ、俺帰りたくないよ。大丈夫だから」

「だめ! 一度帰るのっ。病気したら、絵だって描けないんだからね」

 駄々をこねる父親、諭す私。どっちが親なんだか。

 私たちのやり取りを見ていた昴さんが、クスクスと笑う。

「そういえばさっきから気になっていたんだけど、そちらのお兄さんは?」

 父が照れくさそうに昴さんをちらちらと見る。

「あ、ああこの人は……」

「初めまして。西明寺といいます。美羽さんとお付き合いさせていただいております」

 言いにくいことをあっさりと!

 昴さんはにこにこと営業用スマイルを作ってお父さんと握手を交わした。