「……先輩って、意外に親切なんですね」

「“意外に”は余計だよ。じゃ、行くわ。何があったか知らないけど、明日はちゃんと仕事できるようにしてこいよ」

「ごもっともです」

 ぺこりと頭を下げて先輩を見送ると、ポケットの中のスマホがけたたましく鳴った。

「あっ」

 ディスプレイに表示されるのは、日本の携帯でも東京の固定電話でもないらしき番号。いつもは切れるまで無視してしまうのだけど、今だけは何故か胸騒ぎがした。思い切って画面をスワイプする。

「も、もしもし」

『○▼□**#$&%……』

「ひょえ!?」

 向こうから聞こえるのは、謎の呪文に聞こえる外国語だった。その響きから、英語や中国語、韓国語ではなさそう。だけど何語かははっきりわからない。

「先輩、せんぱーい!」

 アパートの階段を降りていた先輩がぎょっとした顔で振り返る。私はそこまで急いで駆け寄った。

「代わってください。先輩なら海外出張多いし、わかるかも!」

「は?」

 怪訝そうな顔で私に押し付けられたスマホをおそるおそる耳につける松倉先輩。一応先輩の方から『hello?』と流暢な英語で話しかける。しかし。