独占欲高めな社長に捕獲されました

翌朝。

 自分のものより一回り大きなおにぎりを二つ握ったら、これだけじゃ足りないような気がしてきた。少しだけだけど卵焼きとかウインナー、ゆでたブロッコリーも詰めた。

 いつもの通勤カバンに、大きめのトートバッグを持って家を出る。荷物は重くなったけど、なぜだか心は軽かった。

 苦痛でしかない早起きも、苦にならなかった。

「これが恋の力か……」

 通勤電車は相変わらずきつかったけど、会社のビルが見えてきたときに感じる憂鬱は鳴りをひそめていた。

 もうすぐ初冬にさしかかる空は例年より青く、雲はより白く見えた。

 少しだけ素直になって一歩踏み出したことで、私を取り囲む世界がクリアになったみたい。ところどころ剥がれ落ちていた壁画が修復されていくように、私のつまらない世界が塗り替えられていく。

 オフィスにつくと、私のデスクの上は金曜に綺麗に片付けた時のままだった。ホッとして座る。さあ、仕事仕事。

「あ、来てる」

 私のすぐ後に出勤してきた松倉先輩がこっちを見下ろしてボソッと言った。少し意外そうな顔をしている。

 居眠りの件で私が凹み、出勤して来ないとでも思っていたのだろうか。甘く見ていたな。そんなの、すっかり忘却の彼方だったぜ。