いきなりハードル高すぎだよ! ろくに恋愛経験もないのに、いきなり社長を名前で呼べなんて。

 でもこの悪役社長、私が名前を言うまで絶対に放してくれなさそう。こっちも裸だし、それは嫌。

「さ、さいみょうじ、すばる……さん」

 私の頭の中にあるのは、初対面のとき差し出された名刺だった。

「フルネームで呼ぶな、横川美羽」

「社長だって~」

「また社長って言ったな。おしおきするしかない」

 社長は手を放すと、思いきり私の素肌をくすぐりはじめた。主に脇腹中心に。

「ひゃああはは、わかりました、わかりましたよう!」

「よし、許してやろう」

 社長は悪代官みたいな悪い笑い方をしながら、着替えて部屋を出ていった。

 昴さん、か……。呼べるかな……。それにしても、大胆なことしちゃった。私これから、いったいどうなるんだろう。

 もう一度布団をかぶって寝てしまおうかと思った。けど、一度覚醒してしまった脳は、なかなか休まらなかった。