風景のスケッチの次に、フルーツなどの静物。植物。どれも質感をうまく表現している。しかしその次に出てきたものに、思わず声を上げてしまった。
「あっ!」
「ん?」
それは、裸の女のひとだった。ベッドの上で様々なポーズをとっている。たっぷりとボリュームのある丸い乳房。できものひとつない、なめらかな背中。そしてその顔は、先日美術館でばったり会ったときの女性のものだった。
「ああ、これな。うまく描けているだろ」
「……ソウデスネ」
こんなに美人なら、描き甲斐があるでしょうね。なによ、彼女じゃないんて言っておいて。やっぱりそういう仲なんじゃない。
「なにいきなり能面みたいな顔になっているんだ」
「別に」
「おい、もしややきもちか?」
社長は嬉しそうに私の頬を両側につまんで伸ばす。
「バカ。あれはモデルだよ。謝礼を払って、絵のモデルになってもらったんだ」
手を離した社長は声を出して笑った。彼が言うには、美大に進んでデザイン系の仕事をしている友人のつてで、ヌードモデルを紹介してもらったらしい。
「美術館にいたのは……」
「彼女と友人になったからだよ。友人と美術展を見に行って何が悪い?」



