いったいどこの誰が二枚も即決して買ってくれたのかと思っていたら、それが社長だったなんて。

「もう見られないかもと思っていました」

 感激でじわりと涙が浮かぶ。絵に見入る私の後ろから、社長が語りかけてくる。

「素晴らしい絵だったからな。これで元気が出るだろう」

「え……」

「簡単に白旗なんて言うなよ。せっかく楽しくなってきたのに、もう終わりか」

 振り返ると、社長は腕組みをしてこちらを偉そうに見下ろしていた。

 もしかして、私が元気をなくしているのを見て、励まそうとしてくれたのかな。

「簡単じゃありません。私だって社長のような力量があれば、実家のギャラリーをなんとかして存続させていきたいとは思っていますけど……」

「じゃあ、簡単に諦めるな。つまらなくなるだろ」

 いや、社長を楽しませるために頑張っているわけじゃない……。

 抗弁しようとした私の頭をくしゃくしゃとなで、社長はドアの方へ歩く。

「この絵は見たい時にいつでも見に来ればいい」

「本当ですか?」

「ああ。今度はこちらに来い」