「こっち」
慣れた足取りで廊下を歩いていく社長の後ろをついていく。もしや、もしやこれって……。
社長が開けた扉の中に入って、頭がくらくらした。
清潔な玄関ホール。その中に続く広々としたリビングの天井は吹き抜けており、マンションなのに階段まで見えた。
いわゆるペントハウスというやつだろう。ということはここがマンションの最上階だ。
「どうした、入らないのか」
不思議そうに玄関で立ち尽くす私を振り向く社長。だって、これって。
「もしや……ここは社長のお宅でしょうか」
「そりゃそうだろ」
やっぱり。エントランス、エレベーターホール、さらにエレベーターのセキュリティを難なくクリアしてきたんだもの。住人に決まっている。
何の疑いもなくついてきてしまったけど、まさか突然社長の自宅に連れ込まれるとは。
以前、ホテルの一室で半ば無理やりキスされたことを思い出してしまい、気まずくなる。
「心配するな。お前の嫌がることはしないよ」
あくまで紳士的に振舞う社長。私はその言葉を信じ、ゆっくりと足を踏み出した。
