ギャラリーを閉めたあと、おばあちゃんが暇な時間に用意してくれていた夕食をふたりで食べた。昨夜のそばも美味しかったけど、やっぱりおばあちゃんの手料理は最高だ。
私は、昼間の失敗を打ち明けた。おばあちゃんはそれを聞いて静かにうなずいていた。お説教も同情も、そこにはなかった。ただ聞いてくれるだけで、心が軽くなる。
「明日東京に帰るね。例のこと、ひとりでゆっくり考えてくる」
ゆっくり広い湯船につかり、古いベッドでぐっすりと眠った翌朝、スーツを着た私を見ておばあちゃんは微笑んだ。
「うん。また連絡ちょうだい」
「ま、今まで通りギャラリー存続を望むにしても、社長の認める絵が見つけられなかったらどうしようもないんだけどね」
「ああ、そうだったね」
手を振って、私たちは別れた。