テーブルの上で両腕を組み、こちらをじっと見つめるおばあちゃん。私はお湯が沸くまではいいかと、その向かいに座った。

「私、気が済んだわ。このギャラリーを畳むことにした」

「え……!?」

 すっきりきっぱり、爽やかな顔でおばあちゃんは言った。私は耳を疑う。

 だって、今しがたこのギャラリーをやっていて良かったって、言ったばかりなのに。

「おじいさんの絵は方々の美術館に買ってもらいましょう。そうすればちゃんと保管してくれるはず」

「なに言っているの」

「ここに寄せ集めて、隠しておくよりも、その方がたくさんの人に見てもらえる。絵はお金を稼ぐためのものじゃない。誰かに見てもらうためのものだから」

 それはそうだ。そうだけど……。

 戸惑う私に言い聞かせるように、おばあちゃんはゆっくりと話す。

「それに、私ももう歳だから。体力もないし。生きているうちに、おじいさんの作品をちゃんと保管しなきゃ。身辺整理を兼ねて」

「おばあちゃん、やめてよ。まだ元気じゃない。それにおばあちゃんに何かあったとしたら、私が後を継ぐから、心配しなくていい」