誰がお父さんの絵を買っていったんだろう。二枚ともなくなるなんて、思ってもみなかった。
とぼとぼと家に帰る途中、コンビニでパスタサラダとコーヒーを買って気づいた。私、おばあちゃんに電話をかけるのを忘れてた。
昨夜、ホテルを出るまではおばあちゃんに連絡しようと思っていたのに。社長とのキスシーンが脳裏をちらついて私を混乱させるから、頭の片隅に追いやられてしまったのだろう。
暗い部屋の電気をつけ、朝散らかしたままだったテーブルを手早く片付ける。綺麗になったその上に新しいコンビニの袋を置いて電話をかけた。
コールを10回鳴らしても出ないので、心配になる。おばあちゃんが夜出歩くことはほぼない。まさか、実家で倒れているんじゃあ……。
『はい、どなた?』
いちど諦めて切ろうかと思った瞬間、おばあちゃんの声がした。
「もしもし、おばあちゃん。美羽だよ。ねえ、お父さん、生きてた」
『えっ?』
いきなりの報告に戸惑うおばあちゃんに昨日の状況を話す。もちろん、西明寺社長は登場しないように。



