「だー!…くそっ」


焦った。

マジで焦った。


俺…何やってんだ。


「はあ…」


あいつの気持ちはあのワンピースでわかっていた。

でも俺は正直応援したくない。

確かにあの2人には幸せになってほしいと願っている。

が…不毛すぎる。

オルドは望まずとも妻を数人持つことになり、1人のみを愛することは許されない。

ティエナはきっと…我慢する。

今まで通り我慢する。

むしろ…自分から身を引くやつだ。


2人の幼い頃を知っているがゆえ、なおさら見過ごせない。


「せめてケイドだったら…」


いや、そう考えるのはやめよう。

あいつらに失礼だ。


自室のベッドに寝転がりながらまだ慣れない部屋の天井を眺める。

戻ってきたらこんなことになっていたとは思ってもいなかった。


俺はどうしたいんだ。

…どうしたらいいんだ。


オルドの気持ちはどうなんだ…?

まだそういう雰囲気ではなかったが、恐らく時間の問題だと思う。

オルドも大事にしたいものほど距離を取りたがるし。


俺は…

奪うのは性に合わない。

振り向かせたい。

彼女のガードはなんとかなる。

問題は妙に鈍感なところ。


「あー…やめだやめだ」


俺は自分の手のひらを見た。

本当は抱きしめたかった。

泣くのを我慢しきれず震えるその背中ごと。

消化しきれないその気持ちごと。


でも遠かった。


俺ではまだ届かなかったのだ。