誠太郎から菓子を貰って帰宅すると、雪花が出迎えた。

何故か後ろには光希までいるし。

「あら?ひねくれ天の邪鬼陰陽師じゃない」

「何でいるのさ?」

「あれ?光希お前、今日は仕入れの手伝いじゃなかったか?」

てか何であんたも付いてきてんだよ。

「雪花と遊ぶために、死ぬ気で早く終わらせたに決まってるじゃない!それよりあんたは何で桃矢と一緒にいるの?」

「新作の菓子の感想をもらおうと思ってな。ほら、こいつ容赦ないから、正直な感想聞かせてくれそうだし」

僕は菓子は好きじゃないから、雪花にあげるために貰ったんだけど。

「何だか急に賑やかになったね!あ、今二人の分もお茶いれるから待っててね!」

雪花は何やら嬉しそうだね。

今まで友達らしい友達がいなかったせいかもしれないけど。

「取り敢えず、上がりなさいよ」

「ここは僕の家なんだけど」

「まぁまぁ」


「ところで、外の柱に貼ってあったあれ何?」

「ああ、俺も気になってた。前来た時は無かったよな?」

家の柱に貼ってある札の役目が分からず、光希と誠太郎は首を傾げる。

「あれは結界だよ。この家にいればあいつらも中に入ってこれないからね」

「あいつら?」

誠太郎の質問に答えず、僕は外を眺める。

「……ま、いいか。そう言えば、ここ最近流行ってる事件のこと、桃矢は何か知ってるか?」

どうやら話題を変える気になったようだね。

「何も知らないけど。人のやったことなら、僕にはどうしようもないからね」

ただ、気になることはある。

「例の辻斬りって、いつも夜中に起こるんだよな?しかも、狙われるのは若い女ばかりだ」

「……てことは、あたしも危ないってこと?!」

まぁどうしましょと言わんばかりに、光希は両頬押さえてわざとらしく狼狽える。

あんたはまず大丈夫でしょ。

「お前は大丈夫だろ。凶暴だし」

「……喧嘩売ってんの?」

ボキッと手を鳴らす光希に、誠太郎は額から冷や汗を流す。

「え、えーと」

「言っとくけどね、その辺の男よりは強いわよ?でもね、あたしだって女なの!男に守られたいと思う乙女心も持ち合わせてるの!!」

「悪かったって。……でも、お前が襲われる心配は本当に無いと思うぞ?」

誠太郎の言葉に、不満たっぷりな顔をさらす光希。

何だろう。別の意味で嫌な予感がする。

「どういう意味よ?」

「だって、お前のことは俺が絶対に守るからさ」

「!ば、馬鹿!」

ほんと、ほんとさ。他所でやってくんない?

「お茶が入りましたー!……?光希ちゃんと誠太郎くん、二人ともどうしたの?」

僕に聞かれても、あんまり答えたくないから黙るしかないんだけど。

「……取り敢えず、誠太郎の菓子でも食べれば?」

「あ、可愛い。桜の形をしてるね」

雪花が菓子を頬張ってる姿を見ながら、変な顔だなと思っていると、光希と誠太郎は何やらこそこそと話し出した。

「あいつ、雪花見る時の自分の顔に気づいてんのかしら?」

「気付いて無いんじゃないか?可愛いって言いたげな顔してんだけどな」

……こそこそしてるあいつらの声が、しっかり耳に入ってきたせいで、顔に熱がたまった。

それを隠すようにお茶を飲み干すと、ホッとすると同時に嫌な気配を感じる。

何かが起こる。

そんな予感がした。