はっとして、半身を起こすと、傍らで針師が、若者に針を打っていた。

「あたし……」

あわてて跳ね起き、若者にとりすがろうとしたが、下腹部に鈍痛を感じて、思わずうずくまった。

「おや。気がついたのかい?」

老人が、振り向きもせずに、言った。

「この若者が、見つけて連れてきてくれたんじゃ」

その若者は、立派なたてがみをしょっていて、じきに美しいサラブレッドになるだろうと思われた。

だが、それは、少女が待ち望んでいた恋人の姿ではなかった。

少女は、拍子抜けして、その場にうずくまったままでいた。

あれは夢だったのかと思うと、無性に悲しかった。

喪失感が、どっとおしよせてきた。