「虹がどうしてもって言うなら、12時までは頑張って起きてるから、かけるならかけてきなよ」
「.......なに、優しいね」
「ね。俺、優しい」
それきり、またくるりと私に背を向けて、千尋は勉強を再開した。
いつからだろう。
私に背中をむけて黙々と勉強を続ける千尋を見る。
その背中はいつの間にか大きくなって、きれいな逆三角形をつくってる。
小さい頃のように無口でむすっとしていることなんていつの間にかなくなって、千歳くんと同じくらい社交的で、愛想笑いも甘やかしたような声もするようになった。
変わらなかったのはその綺麗な顔立ちだけで、それ以外は小さい頃の千尋の面影なんてまるでない。
いつからだろう。
千尋が、私のことを虹ちゃん、って呼ばなくなったのは。
千歳くんの話に嫌な顔をしなくなったのは。



