「虹ちゃんが本気で家出したいなら俺も一緒に行ってあげようと思ったけど、もういいなら、いい」
「.......うん」
「トイレのこと、虹ちゃん悪くないと思うよ。だからちゃんと、ごめん、ってお母さんに言ってもらえばいいと思う。.......言ってくれなかったら、俺に相談して。.......っ、千歳くん、じゃなくて」
さっき、泣いている私が千歳くんになぐさめられている間、千尋がこっちを振り向くことはなかったのに、話は全部聞いていたみたいだ。
こくん、と半ば適当に頷いて涙を拭っていたら、千尋がそっと私の手をとった。
「.......これ、あげる」
手のひらにカサリと小さな音をたてて置かれたものは、ラメが煌めく虹色の折り紙でつくられたハートの形で。
重さなんてほとんどないはずなのに、手のひらに置かれた瞬間、とん、って優しい重さが胸にくるような心地に、泣くことも忘れてぱちぱちと瞬きをしてしまう。



