優しい声だった。
千歳くんがいない時だけ、少しだけ真っ直ぐにとんでくる、千尋の声。
私は濡れてくしゃくしゃになったパジャマから顔を上げる。
そうしたら、戸惑った顔でぎゅっと唇をかんでいる千尋がいた。
「.......なに、」
我ながら可愛くない返事だったと思う。
だけど、さっきまでずっと背中を向けていた千尋に、泣いて乱れた思考回路では、どんな風な態度を見せるのが正解なのかわからなかった。
千尋はソファーの下にしゃがみこんで、私を上目で見上げた。
「虹ちゃんは、信じてもらえなくて、疑われたから、怒ってるんだよね」
「............うん」
「家出、本当にしたいなら、俺の家じゃ無理だよ。もし、本気なら、この前一緒に見つけた秘密基地とかがいいと思う。あそこなら、たぶん見つからないし、それに、」
「ーーもういい。.......千歳くんは帰ってほしいみたいだし、どうせ今からお母さんが迎えに来るし、千歳くん、今、いないし」
また涙がたまってきた私に、千尋は一度またいつもの難しい顔をしたけれど、それもすぐにやめて、虹ちゃん、と私の名前を呼んだ。



