「…………モウ、逃ガサナイ……」
それは憑霊だった。建物の木屑を体中につけ、憑霊は血と木が混ざりあった独特な臭いを放っている。
「こんなに早く追いついて来るなんて…」
うまく撒いたと思ったのに。
祭壇を背に、完全に逃げ場がない!
「ネェ、諦メテ体、チョーダイヨォ。……大人シクスレバ、痛クシナイカラ…」
そう言い、憑霊は地面を這いながらあたしに迫ってくる。勝ちを確信したのか、その声はバカにしたような笑いに満ちていた。
「だ、誰か……」
あたしはジリジリと後退りする。逃げることのできない恐怖で、完全に頭がパニックになった。
「由梨、英美…!! 助けて!!」
思わず、親友の名前を叫んだ。しかし、助けを求めたところで二人が来るはずはない。
それどころか、このまま捕まれば、二度と二人に会うこともできない。
なんだかゲームを始める前に、三人で楽しくお泊まり会をしていた時のことが、はるか昔のことのように思えてくる。