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そんな辛い思い出に浸りながら、あたしは祭壇にある神境を見つめた。


1ヶ月以上経った今でも、傷は変わらずあたしの顔にあり続ける。そして、あたし自身の過去も。


なんとなく、あたしは鏡に映る傷に手を触れた。すると、


ポチャン。


「えっ…?」


鏡にまるで池に石を落としたように波紋が広がった。


なんだか吸い込まれそうな感覚がして、あたしは手を引っ込めた。


「見間違いかな?」


一瞬だけ、指先が鏡の向こうに行った気がした。


……いや、でもまさかね。


不思議に思いながら、手の平をじっと見つめる。


そのとき。


ガガガガガガガガガガガガガガガ…!!


上から激しい音がした。見ると赤色の天井がギシギシと歪み、木屑が豪雨のように落ちてくる。


あっけにとられていると、バキバキバキバキ…!! と天井の真ん中の辺りが壊れた。そこから黒い塊のようなものが地面に落下した。