「うわぁ、すごっ……」
階段を上った先にあったのは、まるで平安貴族の屋敷のような屋根の赤い大きな平屋の建物だった。
それに近くには大きな青い池があり夜空に浮かぶ満月の光を反射している。
「…って、見とれてる場合じゃない。早く逃げないと!!」
階段から下を見下ろした。
すると憑霊が50mくらい下で立ち止まっていた。
なに? 階段で疲れたの?
そう思い、目を凝らすと、憑霊は猫が遠くにジャンプするときのように体を縮め出した。
ギギギギギギギギギギギギ……!!
関節が軋むような嫌な音がする。
思わず息を飲んだ直後、
ダッッッッッッッッッッツ!!!!
憑霊は限界まで縮めたバネを一気に解放したように、あたしの方まで一瞬でジャンプしてきた。
黒い影があたしの真横を通過する。
「うわぁぁぁああ!!」
ガゴンッ!!と、爆発するような轟音があたしの隣にあった鳥居の柱から聞こえてくる。
直後に大木のように太い柱が折れて倒れてしまった。
「嘘でしょ…」
柱の向こうには木屑にまみれた憑霊がいる。さっきの憑霊の体当たりがあたしからそれて柱を折ったんだ。
「フフッ、フフフッ。 コレデモ、逃ゲ、キレルツモリ?」
憑霊は不気味な声で笑う。
あたしはガクガクと震えながら池の方に後退りした。