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気がつくとあたしは見覚えのない公衆トイレの中で壁に寄りかかり倒れていた。


夢から現実世界に戻ってきたの?


でもなんで家じゃなくてこんなところにいるんだろう?


そう思い辺りを見渡すと、目の前に三つ並んだ手洗い場が見えた。


そのうち真ん中の蛇口が出しっぱなしになっていて洗面台から水があふれ室内を水浸しにしている。たぶん洗面台の中に何か詰まっているのだろう。


服装もゲーム中の制服から寝る前に着ていたパジャマに変わっていた。床にいたせいでパジャマも水で濡れている。


「ん? 変だな。ポケットに何か入ってる…」


寝る前は特に何も入れていなかったはずなのに。


なぜかズボンの右ポケットに細長いものが入っている感覚がした。


なんだか嫌な予感がする。


あたしは息を飲み、恐る恐るポケットの中にあるものをつかんで取り出した。


「……っ!! 何、これ!?」


あたしのポケットに入っていたもの。それは、血がべっとりとついた一本のナイフだった。