「ごほっ、ごほっ、痛っ…」
痛みで全身が悲鳴を上げている。呼吸も荒くなって息をする度にあばらの辺りが痛んだ。
……けどあたし、なんとか生きてる。
どうやら途中にあった木の枝がクッションになって落下の衝撃を和らげたみたいだ。
上を見上げると月明かりに照らされながら憑霊が音楽室のベランダからあたしを見下ろしていた。
まさか音楽室に先回りされているとは思わなかったけれど、結果的に逃げ切ったみたいだ。
あたしは呼吸を整えながら鉛のように重い体をなんとか起こそうとした。
「痛っ…!!」
左足に今まで感じたことのないくらいの痛みが走った。しかも、別人の足のように言うことをきかない。
……たぶん骨が折れてるんだ。
モデルの仕事柄、自分の体には気を遣ってきたから骨が折れるなんて初めての体験だ。
幸い右足は無事だったけれど、体のダメージが大きくて這ってしか歩けそうにない。
まずい。……これじゃあもうまともに動けないよ。
焦りを覚えるあたしの耳に、どこからか奇妙な音が聞こえてきた。
ドクッ。ドクッ。ドクッ。ドクッ。