「だ、大丈夫…!
だってこれ、ただの夢なんだから…」


そう自分に言いきかせながらも、体は恐怖でビクビクと震えだした。


まばたきも忘れ、声のする方をじっと見つめる。


虫の知らせというか……あたしはこの瞬間、すでにこれが普通の夢でないことを感じていた。


……一体これから、この悪夢はどうなるの? もしかしたら現実にある恐怖よりも、よほど恐ろしいナニカが迫っているのかもしれない。


そんなことを思っていると、


「うあっ…!!」


廊下の端から、上下に跳び跳ねて歩く黒い人影が現れた。


見た感じ人間のようだけれど、暗くて姿がよく見えない。


黒い人影は、ゆっくりとあたしのいる昇降口に近づいてくる。


やがて窓から射す月明かりが、その人影を明るく照らした。あたしの目に、はっきりとその姿が映る。