「ひゃああっ…!!」


あまりにも一瞬の出来事に、頭が真っ白になった。ガラスはかなり厚みのある造りだったが、静華が何度も手の平で叩くうちに、大きなヒビが入っていく。


逃げろ!! 逃げないと!!?? 逃げるんだ!!!!


少しでも遠くに逃げるために、全速力で走り出した。手術室の前を通り、階段を下りる。するとガシャンンッ!!!! とさっきのガラスが完全に割れた音がした。


……静華がくる!!!!


血が凍るような恐怖を感じ、あたしはさらに二階へと続く階段を下りていった。


二階に着くと、廊下を息が続く限り全力で走った。


静華に足で逃げきるのはもう不可能だ。きっと陸上部の子やオリンピック選手をつれてきても無理。だったらどこかに隠れてやり過ごすしかない。でもどこに!?


そんなことを思いながら足を進めていくと、目の前に電気の点いた部屋が見えた。


暗闇に慣れていた目にはかなり眩しかった。ガラス張りの受付のような場所……ナースステーションだ。


受付のカウンターに肘をつき、あたしは「ぜぇ、ぜぇ…」と息を切らせる。体力もすでに限界だ。それに急に走ったせいか、足にズキズキとした痛みが走った。


「でも、こんなところで休んでる場合じゃない。早くどこかに隠れないと…」


息を整えながら、静華が来ないか耳をすませる。すると手元のカウンターに、カレンダーがあることに気がついた。


おもむろに日付を見て、あたしは目を見開いた。


「7月の14日……しかもこの年号って!」