……このままじゃヤバイ。


恐怖で体が硬直する。音をたてないように注意しながら、あたしはなんとか手を動かし、右の靴を脱いだ。それを男に気づかれないように、できるだけ遠くに投げる。


カンッ!! と音をたて、靴はモニターに当たり、手術台の上に落ちた。


男は背中を向け「ん?」と不思議そうに台の上の靴を見つめる。


完全に男の視界から外れた。そう確信し、あたしはメスで男に襲いかかった。


あたしの気配を感じたのか「……!?」男は驚いた表情で振り返る。同時にあたしは男の首にメスを突き刺した。


「うぁぁぁああああ!!!!!!!!!!」


深く食い込む刃。噴き出す大量の血。悲鳴と奇声を上げながら、男は苦し紛れに暴れまわる。あたしはメスを両手で握り直し、暴れ牛を操る闘牛士のように男にしがみつく。


1分ほど経つと、男は膝をつき、倒れた。辺りはバケツをひっくり返したような血で真っ赤に染まる。


「はぁ、はぁ……」


制服を血まみれに汚したあたしは、息を切らせ、男からメスを抜いた。大量の血を流し、真っ白な顔になった男は確認するまでもなく、事切れていた。