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目を覚ますと、目の前にはあたしと同じ凪瀬高校の制服を着た首のない憑霊の……静華の姿があった。


「ここって?」


起きてすぐ、あたしがどこにいるのか理解した。ここはあたしが生まれた公立病院のロビーだ。そしてあたしが例の傷を負ったとき、運ばれた病院でもある。


あたしは静華の方を見た。静華は黙ったままこちらを見ていた。制服は血まみれで首もなかったけれど、ゲームが始まったときと比べれば、かなり人間らしい姿になっていた。


「静華…!!」


あたしは初めて憑霊に、彼女の本当の名前で呼びかけた。静華はピクリとも反応を見せない。あたしはそんなに静華に、


「あたしは絶対に負けない!! あたしの未来を守るために!! そして必ず……恭也の居場所を教えてもらう!!」


と力を込めて言い切った。自分でも、今までとは別人なくらい気持ちを強く持てていることを感じた。


今のあたしに過去の自分と違う強さがあるとすれば、それはきっと、明確に未来を”生きたい”と願ったからだ。


その強い気持ちが、自分に物語のヒーローのように静華と戦う決意と覚悟をくれた。


皮肉なことだけれど、今まで自分という存在に絶望しきっていたあたしが、これほど強い未来への希望を持つきっかけとなったのは、憑霊ゲームと静華の存在だった。


そんなあたしを静華は不気味な声で笑った。それはまるで、あたしの思いや覚悟を、徹底的にバカにするような笑いだった。