「誤解しないで聞いてね。双子の妊娠の場合、母体からの栄養が片方の子に偏ってしまう場合があるらしいの。もし、七海と静華にも同じことが起きていたとしたら…」


由梨が言ったのと同時に、あたしの頭に、静華が言った『アンタナンテ。生マレテコナキャヨカッタノニ』という言葉と場面が鮮明に過った。頭の中で何かがつながった気がした。


「あたしがいなかったら、静華は生まれてこれたかもしれないってこと? だから、静華はあたしを恨んでいるの?」


あたしが言うと、由梨は顔を背け「あくまで“そういう可能性もある”って話よ」と言い、言葉を濁した。


……でももし、由梨が言っていることが正しければ、色々と辻褄があう気がする。


そんなことを思いながら、あたしは静華のお地蔵様の前で膝をつき、手を合わせた。


由梨と英美もあたしの両隣に来て、同じように手を合わせる。目をつぶり、あたし達はいつまでも静華に祈りを捧げた。


やがて目を開けると「思えば静華も、可哀想な子だよ。そりゃ生まれてこれたあたしだって、今までお母さんや“父親”のことで散々、苦しめられたけれど。それでも生きてるってことは、多分、それだけですごく価値があってさ。気づかないだけで、みんな、誰かに愛されて今を生きてるんだから。……でも静華は、その愛情を受けることができなかった。あいつは、愛を知らないんだよ…」と言い、じっと静華のお地蔵様の顔を見つめた。


そんなあたしに英美は立ち上がり「だけど七海さん。あいつが何をしたのか……忘れたらダメっすよ」といつになく厳しい口調で言った。