「ええ…」お母さんは寂しそうに言うと、静かにあたしから離れた。


「行っちゃうの? もっと一緒にいたいのに…」自然と甘えた声であたしは言った。お母さんはにこっと笑いメモ帳を取り出すと何かを書き始めた。


「はやく。もう他の人待たせてるから」村上さんが時計を見ながらせかすと、お母さんはチラッとだけ村上さんを見て、すぐにあたしの方に視線を戻した。


「さっき静華が死んだって言ったけれど、あたしはね。まだ静華は生きてると思ってるの」そう言うとお母さんはあたしに書いていたメモ用紙を握らせた。


「どういうこと?」あたしが聞くと「バニシングツインで消えてしまった子供は、子宮を通して生き残った赤ちゃんの体に栄養として吸収されると言われているの。……だから七海の中に、まだ静華は生きているのよ」


お母さんの言葉に、あたしは憑霊のことが頭を過って、思わずゾッとした。だけどその感情をお母さんに悟られないように、とっさにメモ用紙に視線を移した。


そこには、どこかの住所が書いてあった。