五分後。


「ダメでした……」


エントランスにあった椅子に腰掛け、あたしは二人に言った。由梨は「やっぱりね」とため息をつく。


警備員のおじさんはあたしのことは知らなかったし、樋口静海の娘だって言っても信じてくれなかった!


こんなに冷たく追い返されるなんて、けっこうショック…。


「うぁ~! どうしたらいいんすか!? 静海さんは目と鼻の先なのに! 親子が会うのに入構証がいるなんておかしいっすよ!」


英美がわめくと、なんだかあたしまでイライラしてきて「ほんとそれ! あたし、もう一回、あいつに言ってくる!」と席を立った。


「ちょっと七海、落ち着きなって」


由梨が言うと、突然、「きゃー!!!!」って女の子達の歓声が上がり、あたしは10人くらいの女子高生に囲まれた。


「うわ、な、なに!?」


訳が分からず、その子達を見渡す。


「ねぇねぇ!! あなたloveteenの専属モデルだった樋口七海ちゃんだよね!」


「ヤバー!! 本物、超可愛い!!」


「修学旅行で会えるとか偶然!? ラッキーすぎ!!
写真撮ってもいいですか!?」


興奮した様子で、一斉にしゃべり出した。どうやらこの子達は修学旅行生らしい。