あたしは消火器の安全ピンを外し、ホースの先端を持った。


前に消火訓練の授業で友達とおしゃべりしていたら先生に目をつけられて、消防士の人にみんなの前で消火器の使い方を習ったことがある。


あのときは色々な意味で超恥ずかしかったけど、今はそれが思わぬ形で役に立つかもしれない。


ホースを生徒達にむけ、あたしは訓練のときみたいに狙いを定め、思いっきり消火器のレバーを握った。


すると一気にホースから白い煙が飛び出した。


煙は廊下中に充満し、煙幕のように目の前を真っ白にする。


その間に全力で走り抜け、群がる生徒達の壁を越えていった。


なんとか逃げ切ったかな…!?


そのまま三階の教室棟から特教棟へつながる渡り廊下を進む。


途中、またあの黒い目の生徒がいるかと思って警戒した。


だけど特教棟につくと、さっきのが嘘みたいに静まり返っていて人の気配はなかった。


「はぁはぁ、もう無理…」


走り疲れたあたしは、憑霊が追ってこないことを確認して緑のライトが照らす非常扉に寄りかかった。こんなことなら、体育の持久走をもっと真面目にやっとくんだった。


とりあえず息を整えながら気持ちを落ち着かせる。


その間に、頭でこれまでのことを整理してみた。