☆☆☆

目を覚ますと、


「七海さんってば!!」


そこには、壁に寄りかかっていたあたしの顔をのぞく英美の姿があった。


「うわっ!!!!」


遊園地のことを思い出したあたしは、恐怖で反射的に英美を突き飛ばした。


「いてっ!」


英美はびっくりしながら地面に倒れた。


そこであたしはハッと我に返り「ご、ごめん。つい…」と謝った。


時刻は朝の九時をまわっていた。


「いや、いいんすよ。鍵が開いてたもんで勝手にあがらせてもらいました」


制服姿の英美は「いてて」とぶつけた頭をさすりながら言う。


「その様子だと昨夜のゲームには勝ったんすね。カイトさんの事務所が留守だったときはどうなるかと思いましたけど」


英美の言葉にあたしは例の動画のことを思い出し、


「うん。……でも、カイトさんは…」


とうつむきながら小さな声で言った。


英美はあたしの声がうまく聞き取りなかったらしく「とにかく、話は後っす。今、大変なことになってるんすよ…」と血相を変えて自分の用件を伝えた。


「大変なこと?」


あたしが聞き返すと「……恭子さんのことっす。玄関で待ってますんで、着替えたらすぐにおりてきてください」と英美はスマホを取り出しながら最低限のことだけ言い、下におりていった。


夜に目が覚めたときには気がつかなかったけれど、あたしの着ていた制服は汗と泥でぐちゃぐちゃに汚れていた。


一階からは誰かと電話する英美の声が聞こえてきた。