「七海の体の中に僕はいるんだ。僕の愛が君を作ったんだ。……さぁ、僕を感じでよ。僕を見てよぉ!!」


激しく興奮した男の声。あたしは思わず「うわぁぁああ!!!!」と叫び、男に襲いかかった。


「うぐあっ……」


頭が真っ白になるほどの激情に、あたしは自我を失った。気がつくとあたしは怒りに身を任せ、男の首を絞めていた。


「ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!! ふざけんな!!!!!!!!!!!」


そう何度も繰り返し、男の首をぎゅっと絞める。


お前がいたから……あたしなんかが生まれてきたんだ!!


お前がいなかったら……お母さんもあたしも苦しまずに済んだんだ!!


その思いが、あたしの中で明確な殺意に変わる。初めて本気で、あたしは人を殺そうとしていたのだ。


すると男はそんなあたしを嘲笑った。その笑みは多分、子供の駄々に付き合う大人の見せる余裕だった。


「僕が何に見える? 七海にとって僕は……穢らわしい魔物かい?」


口から液体を滴らせながら、男は問いかける。


そしておもむろにポケットに手を入れ、


「……だがほら……見ろよ」


とさっきお母さんを脅すときに使っていた刃物を取り出した。


「……いるじゃないか? いつもここに……七海の中に……」