中は予想通り、サーカスの会場だった。柵で囲まれた白黒のチェックの床の丸いステージを中心に、その周りには観客席がある。


ステージ全体は青白く、月明かりのようなライトで照らされていた。


そしてステージ中央には、まるで演劇の一場面のように……長身で痩せた男が、細い体つきの女に覆い被さっていた。


「うるさい、喚くな………」


そう言う男の手に、振り上げられた刃物が光る。女は「ひぃ…!!」と甲高い声を上げ、抵抗を諦めたのか、妙にシーンとした雰囲気で声を押し殺す。女の表情は向こうを向いていてよく見えなかった。


ただ虚しく……男の不快な息づかいと、女のむせび泣く声だけが会場に響く。


「…………」


あたしはすぐに、男が女に何をしているのか分かった。


だけど、あたしひとりの力ではどうすることもできず、ただ忍び込むように二人に近づいた。


すると、男の下にいた女の首がグルリと曲がり、あたしの方を向いた。


「……っ!!」


瞬間、あたしの目と、女の目がかち合った。光のない真っ暗な絶望の中、どこか遠くを見るような虚無的な目だ。


……そしてほぼ同時に、あたしはその女と、男の正体を悟った。