「……わりぃ、嫌なこと思い出させちまったみたいだな」


突然のあたしの涙にカイトさんは困った顔をした。


「すいません……徐霊の前に…」


泣き顔を男の人に見られた。その恥ずかしさで、あたしは顔を背け、手で覆い隠す。


「七海ちゃんはどうも、自分を卑下しすぎてるよ。そんな気持ちじゃ、憑霊に負けちまうぜ」


いつになく優しい声で、カイトさんが言う。


「あたしの気持ちが、憑霊と戦うのに関係あるんですか…?」


「ああ。憑依されやすい精神状態ってのは色々とある。不満や失望、嫉妬に罪悪感。

……だが共通して言えるのは、"自分を否定したくなるような気持ち"を抱いてるときだ」


そう言い、カイトさんは膝をついてあたしと視線を合わせた。あたしは顔を上げ、カイトさんと目を合わせる。


「だから霊と戦うときは、自分を愛する気持ちが一番大切なんだ。絶対に自分を取られてたまるか!っていう確固たる意思がな」


力強く、カイトさんが言う。


「それ、今のあたしに……できますかね?」


あたしが言うと、


「気づいてないだけだよ。七海ちゃんの場合は…」


そう答え、カイトさんは笑う。


「……気づいてない? 何をですか?」