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カイトさんの事務所につき、あたしは事務所の奥にある部屋に通された。
そこは本棚が四方に並べられた図書館のような部屋だ。床にはたくさんの蝋燭が置かれていて、薄暗い暖色の光がうっすらと足元を照らしている。
蝋燭に囲まれた真ん中には、ポツリと木製の椅子が置いてあった。あたしはカイトさんに促され、その椅子に座った。
「……カイトさん、あたし、徐霊をやめてもいいですか?」
前振りもなく、あたしはカイトさんに言った。
「はぁ? なんだよいきなり」
カイトさんは意味わかんねぇという顔で首をかしげる。
「憑霊は四日間、ゲームに勝てば恭也の居場所を教えると言ってました。だからもし憑霊を徐霊したら、恭也の居場所が二度と分からなくなるかもしれないんです…」
恭子さんと話しているときにふと思ったことだ。
カイトさんに憑霊を徐霊してもらうことは、ゲームを途中で投げ出すことになる。
そうすれば、憑霊から恭也の居場所を聞き出すチャンスを失うことになりかねない……と思ったのだ。
「なんだ、そんなことかよ。心配すんな。恭也君の居場所くらい、俺が徐霊中に憑霊から読み取ってやるよ」
あたしの不安に反して、カイトさんはけろっとした顔で言った。
「…っ! そんなことができるんですか?」
「ま、俺は天才だからな」
前と同じどや顔でカイトさんは笑う。
「とにかく、余計な心配はするな。今はゲームに勝つことだけを考えてればいい」
「はい…」
それからまた数時間が経過した。時刻は夜の一時をまわる。昨日なら、ちょうど憑霊ゲームが始まった時間だ。
「なぁ、暇潰しに七海ちゃんのこと、ちょっと聞いてもいいか?」
カイトさんが言う。



