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店を出て、あたし達は夜道を歩いていた。すっかり辺りは暗くなっていて、チカチカと点滅する古い街灯だけが住宅街の道をうっすらと照らしている。


「生まれて来れなかった兄弟のこと、七海は何も聞いてないのよね?」


後ろを歩いていた由梨が言った。


「うん。ずっとあたし、一人っ子だと思ってたし…」


「恭子さんの話が本当だとすると、なんで隠してたんすかね? 静海さんは…」


由梨の隣を歩いていた英美が言う。


「分からないけど、多分、何か理由があるんだと思う…」


あたしには言えない秘密が……まだお母さんには…。


「……だったら、確かめた方がいいわよ。静海さんに」


由梨の言葉に、


「…………」


あたしは街灯が照らす電柱の下で、足を止めた。