はっきりとしないあたしに代わって、恭子さんが言った。


「……はい。二日前、憑霊があたしを乗っ取ったときに、恭也をどこかに監禁したんだと思います…」


あたしが答える。


「じゃあ、生きてはいるのね…?」


恭子さんは言葉のトーンを強めて言った。


「はい。恭也が今どこにいるのかは分かりません。でもゲームに勝てば、あいつは居場所を教えると言ってました…」


「そう…」


恭子さんは力のない虚ろな目で下を向いた。


「……おかしいと思ったのよね。いくらヤンチャな恭也でも、私に何の連絡もしてこないなんて、今までなかったもの…」


恭子さんが呟く。


「……ごめんなさい。全部あたしのせいです。あたしが恭也と付き合っていなければ、こんなことには…」


どうしようもない気持ちで、あたしは恭子さんに頭を下げた。すると、


「……恭也の初めての彼女なのよね。七海ちゃんって…」


恭子さんがあたしに言う。


「えっ…?」


言葉の意図がつかめず、あたしは顔を上げ、恭子さんを見た。


「七海ちゃんがどう思ってるか知らないけど、恭也は七海ちゃんのことが大好きなの。

恭也はずっと……私の小さな弟だと思ってたのに、七海ちゃんに取られちゃったって嫉妬したくらい…」


そう言い、恭子さんは立ち上がった。その瞳には、いっぱいの涙を浮かべて…。


「……必ず、恭也を憑霊から取り戻して。じゃないと私、許さないから…」


そう言い残して、恭子さんは店を出ていった。あたしは何も言葉を返せずに、その背中を見つめた。