「えっ…?」


言葉の意味がわからず、あたしは首をかしげた。


「ちょっと待ってください。……いきなり魂って? そもそもそんなの、本当に存在するんですか?」


由梨は不思議そうに尋ねた。


「もちろん。人間に限らず、生のあるものは魂と、それを入れる器……つまり肉体のワンセットで成り立ってる。魂に関しては、俺みたいな特殊な人間にしか感じられねぇけどな」


そう言い、カイトさんは懐からミントの辛いガムを取り出して口に入れた。


「……肉体と魂ってのは、言うなれば車と運転手みたいな関係だ。肉体が健康でも、運転手である魂がなければ生物は個体として成り立たなくなるし、その逆もしかりだ。……それにひとつの肉体につき、運転席はひとつしかない。だから基本的に同一の魂が死ぬまで運転手としてその個体の主導権を握ることになる。

……ただ稀に、この主導権を奪おうとする奴が現れる。そいつが何だか分かるか?」


カイトさんはあたし達に問いかけた。


「そう言われても…」


そもそも魂とか肉体とか主導権とか……そんなオカルトチックで中二くさい話……いきなり言われても頭が追いつかないしなぁ。


あたしが「うーん」と考えていると、英美が先にハッとひらめいて答えた。


「もしかして憑霊や、さっきの猫みたいな霊のことっすか?」


カイトさんはこくりとうなずいた。


「そう。霊には肉体がなくて魂しかない。だが裏を返すと、誰かの器の中に侵入して元の魂から主導権を奪えば、霊がこの世に生き返ることも不可能じゃないってことだ。

……ただそれが簡単にできねぇのは、生きている人間の器は外界からの侵入が困難なように守られてるからだ。俗に言う、オーラや守護霊ってやつにな」