それを見て、あたし達はぎょっとした。里奈の腕には、まるでライオンにでもひっかかれたような痛々しい傷が肌を埋め尽くすほど刻まれていたのだ。


「へぇ、たしかにこれは霊の仕業だな」


カイトさんは里奈の傷を見ても表情を変えることなくそう言った。


「あの猫のせいです!!…… 私ネットで調べたら、動物の死体に手を合わせると、その動物に祟られるって話がありました! だから里奈は、死体の猫に呪われたんだと思います!!」


里奈の友達が興奮した様子で声を荒げる。


「お願いしますカイトさん……助けてください……この傷、今朝からどんどん体に広がって……このままじゃ私、猫の霊に殺される……」


そう言い、里奈はまた泣き出した。


「里奈……大丈夫だから」


友達が慰める。なんだか二人ともアクションが大袈裟だ。そして、カイトさんを見て、


「私からもお願いします! 里奈のために猫の霊を徐霊してください!!」


とまた力強く訴えた。そんな二人にカイトさんはうんざりした様子でため息をついた。


「……他に何か……言うことはない?」


カイトさんは噛んでいたガムをティッシュにくるみながら、ひんやりとした口ぶりで問いかける。


里奈は首を横に振り「ありません。どうか私に取り憑いた猫の霊を倒してください…」と泣きながら返事をした。……その直後、


バシッ…!!!!


「…っ………!?」


突然、カイトさんは里奈の頬を手のひらで殴った。