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それから泣いていた里奈って子が少し落ち着くと、
「始まりは二週間くらい前のことです。私は朝の通学路で、車にひかれた猫の死体を見つけました。すごく可哀想で……私、思わず、手を合わせてしまったんです…」
里奈はサディスティックカイトこと、カイトさんに話し始めた(年上だろうし、一応さん付け)。
カイトさんは「うんうん」とうなずきながら話を聞く。
「あ、あのう…」
部屋に入ってから放置されていたあたし達は、気まずくなって声をかけた。
カイトさんは無言のまま、手で「ちょっと待ってて」と合図した。部屋から出るのもなんだし、あたし達もそのまま先に依頼に来ていた里奈の話を聞くことにした。
「その日から奇妙なことが起こるようになりました。ふとしたときに猫のような鳴き声が聞こえたり、髪や服に動物の毛がついてたりしたんです。
……でもそれだけなら、まだよかったんですが……」
里奈はゾッとした表情を浮かべる。隣にいた友達も里奈の背中を擦った。
「ある日、夜道を歩いていると、突然、意識を失いました。……それから何時間かして気がつくと……まるで野良猫みたいに、私、ゴミだめで鼠の首を食い千切ってたんです…」
里奈の言葉に、ブルッと身震いした英美は「なんか、七海さんと似てますね…」と耳打ちした。
「たしかに…」
あたしはうなずく。自分が無意識のうちに、得たいの知れないナニカに操られる恐怖。里奈の怖がる気持ち、よく分かるかも。
「……それに今朝なんか……見てください…」
里奈は制服の袖をまくり、カイトさんに腕を見せた。
「うわっ…!!」



