由梨が近くの階段から降りてきた。


由梨はあたしと英美の側まで歩み寄る。


「あっ…」


由梨の首には、痛々しい痣が見えた。たぶん昨日、あたしが首を絞めたときにできたのだろう。


「…………」


思わず、あたしは由梨から目を反らした。


「……七海が帰ったあとね。英美と一緒に話し合ったの。これからどうするのか? 私達は、どうしたいのかを…」


英美と同じく、由梨はあたしの手を握った。そして、あたしの目をじっと見据える。あたしもそんな由梨の瞳に視線を合わせた。


「……答えは、すぐに出たわ。私も英美も、七海を助けたいって。七海を絶対に、憑霊に奪われたくないって!」


「英美、由梨……」


目の辺りがジーンと熱くなった。顔が真っ赤に染まり、瞼の奥が滲んでいく。あたしは唇をぎゅっと結び、顔を背けた。それでも一筋、雫が落ちた。


「……本当に? あたしなんかのために、力を貸してくれるの…?」


そう言うと、英美と由梨はあたしの手を握りながら、同時に口を開いた。


「もちろん(っす)よ!」


二人はにっこりと笑った。あたしも顔を上げて、今度は二人に微笑みながら言う。


「ありがとう。
……みんなで一緒に、憑霊と戦おう」