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「七海さん! 七海さん!! 七海さん!!!!」


英美の声が聞こえてくる。どうやら現実世界に戻って来たみたいだ。


「あっ…!!」


目を開けると、そこには泣きながらよだれを垂らす由梨の苦しげな顔があった。


「うぐ……あっ……」


……しかもあたしは由梨に馬乗りになり、由梨の首を絞めていたのだ。


「うわぁっ!!」


あたしは叫び声を上げ、由梨から離れた。由梨は「げほっ、げほっ…!!」と苦しそうに嘔吐する。


英美もすぐ近くで泣きながら腰を抜かしていた。


「一体、何が…」


わけがわからなかった。たしか現実世界のあたしは、椅子に縛られて身動きが取れなかったはずじゃ。


「痛っ!!」


手首を見ると、血の滲んだロープの跡がくっきりと刻まれていた。


部屋の中も異様だった。縛られていた椅子は倒され、近くに千切られた跡のあるロープがあった。前にあった撮影用の三脚も倒されている。そこに設置されたスマホは、まだ録画を続けている。


「七海、なのよね…?」


あたしに首を締められ、苦しそうに咳き込んでいた由梨がようやく口をきいた。


「どういうことなの? あたしが眠っている間に、何があったの…?」


「…………」


由梨と英美は気まずそうに目線を反らした。そして床にあるスマホに視線を移した。