「……?」


一瞬、何が起きたのか理解できなかった。


鋭い痛みが首に走ったあと、あたしは突然、宙を舞っていたのだ。


……いや、違う。


視界に、さっき返した腕を血で真っ赤に染めた憑霊と、首のない、あたし自身の体が見えた。


……宙を舞っているのは、あたしの“首”だけだった。


グルグルと視界が回転したあと、あたしはドタンッ……と、畳の上に落下した。


……そっか。あたしが返した腕で、憑霊があたしの首を切り落としたんだ。


憑霊の方を向いて落下したあたしは、妙に冷静になってそんなことを考えていた。


「…………………」


何か声を出そうにも、顎の筋肉が動かず、うまく口が開かなかった。


……もはや痛覚も機能せず、溢れる血が畳の上を深紅に染め、あたしはだらしなく口を開いて涎を垂らした。


「ハハッ…!! ハハハハッ…!!」


薄れ行く意識の中、最後に目に映ったのは、笑いながら首のないあたしの死体を引き裂き、内臓を引きずり下ろす憑霊の姿だった。


……あたし、死ぬのかな? ……いや、大丈夫。これは夢なんだ。それにゲームには勝てたはずだ。


やがて視界が真っ暗に変わる。最初のゲームのときのように、意識が暗闇の中に沈んでいくのが分かった。


……そんな中、憑霊の笑い声はいつまでも頭に響いた。


まるでそれはゲームに翻弄されるあたしを嘲笑うかのように聞こえた…。