閉店するとがらんどうになった店内。
 踏ん反り返って椅子に座る彼が指示を出す。

「ほら。そこの隅、ちゃんと掃けよ。」

 本当に下僕扱い!

 電気が煌々とつくとお店の中がよく分かった。

「このくらい明るい方がいいな。」

 私の率直な感想は彼の元に届いてしまった。

「だからお子様って言うんだよ。
 暗い方が……見なくていいこともある。
 明るい下で見る女の顔とか。」

 クククッと笑う彼は楽しそうに付け加えた。

「ボロい店内とか。」

「ボロですみませんね。」

「マスター!
 お疲れ様です。」

 頭を下げるとマスターは私に手を上げて「お疲れ様です」と応えた。
 そして伶央さんに業務連絡をする。

「ボロくても鍵は閉めて帰ってください。
 明日は来れないでしょう?
 鍵を届けてくださいね。」

「はい。」

 気乗りしない伶央さんの返事を聞いてからマスターは「お先に失礼しますね」と店を出て行った。